米中外交トップ会談 人権問題などで対立

米国と中国の外交トップの直接会談は2日間、深刻な対立関係を象徴するかのような激しい応酬を繰り広げた。

特に、人権問題や領土問題、安全保障問題に関して両国の主張が真っ向から対立した。

アメリカと中国の人権問題について考えてみようと思います。

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アメリカの人権問題

まずはアメリカの人権問題から考えていきます。

黒人差別

中国側の発言によると、「アメリカにも黒人差別という人権問題がある」とのことだ。

実際、欧米諸国では黒人奴隷は安い労働力として使われていた歴史があり、奴隷制廃止後も様々な差別がありました。

しかし、南北戦争中にリンカンが主導したアメリカ合衆国憲法修正第13条によって、奴隷制度は禁止されました、

その後も黒人差別は残り続けたが、キング牧師らによって1950年代から進められた公民権運動の高まりを受け、1964年に公民権法が成立しました。

公民権法・・・黒人の選挙権の保証、公教育や雇用などにおける人種差別の撤廃、すべての人が財、サービス、設備、特典、利益、便宜を「完全かつ平等」に享受する権利を有することなどが示された。

少しずつ改善していますが、公民権法の成立後も依然として黒人差別の問題は解決されていません。

近年の黒人差別

貧困層の割合は白人8.1%に対して黒人20.1%であり(2018年)、2倍以上の差があります。

2013年から2019年の統計結果によると、アメリカ人口の76.3%が白人、13.4%が黒人と白人のほうが多いにも関わらず、黒人は白人より警察に殺される確率が3倍高いのです。

更に、無意識的な偏見が黒人差別を助長しています。

2013年、日本の著名な大学で行われた英語専攻でない80人の生徒を対象とした調査では、見た目だけで判断した場合、黒人の英語教師より白人の教師のほうが望ましいとする回答が多かったという調査結果が出ています。

このように、黒人差別はアメリカ特有の問題ではありませんが、アメリカでは特に警察による黒人差別が深刻であると考えられます。

アジア人差別

アメリカでの人権問題と聞くと、多くの人が黒人差別を思い浮かべるでしょうが、実際にはアジア人差別も存在します。

アジア人差別も歴史は古く、黄禍論(こうかろん・おうかろん)と呼ばれる黄色人種脅威論は、白人労働者がアジア系移民に仕事や生活を奪われることへの恐怖から生まれました。

1882年には中国人排斥法という、移民を人種によって制限する初めての法律ができ、その法律によって中国人が制限され、中国人経営のビジネスに対する不当な課税が要求されました。

こういった歴史が今でも続くアジア系全体への差別につながっているのです。

最近のアジア人差別

ニューヨークでは52歳の中国系の女性が、ベーカリーの列に並んでいたところ、突然頭を新聞箱に押し込まれるという事件が起こりました。その数週間前には、短期間に2人のアジア系年配女性に対する地下鉄での暴行事件が起きました。

このようなアジア人に対するヘイトクライムが多発していますが、黒人差別に対する反対運動に比べて、あまり抗議の声が上がりません。

中国の人権問題

アメリカ側は「新疆ウイグル自治区、チベット、香港における中国の人権侵害のほか、サイバー攻撃、台湾への圧力に対する懸念」を表明した。

それぞれ見ていきます。

新疆ウイグル自治区

中国の新疆ウイグル自治区では、約1200万人のウイグル人が暮らしているとされますが、中国政府が「再教育施設」と呼ぶ場所には、過去数年間で100万人ものウイグル人が拘束されたとみられている。

また、ウイグル人女性に強制的に不妊手術を受けさせたり、漢民族の男性と結婚することを強要したりしており、深刻な人権侵害である。

アメリカやEU諸国、日本やオーストラリアなどは「人権侵害」として非難しているが、中国は「事実無根だ」などとして一切認めない。

チベット

チベット問題は、中華人民共和国が成立した1949年から現在まで続いています。

仏教国であったチベットの95%以上の僧院を破壊したり、中国に反抗する勢力を国軍により弾圧したり、「文化大革命」により100万人以上の死者を出したりなど、深刻な人権侵害が数多く存在します。

更に、共産党のチームが駐屯して「愛国教育」と称する講習を行ない、チベット人の指導者であるダライ・ラマ法王をののしることが強制され、嫌がる者は僧籍を剥奪されて追い出されたり「分離主義者」として投獄されて拷問を受けたりします。

ウイグル自治区と同様に、チベット人に避妊や中絶を強制しているという報告もあります。

香港

香港は、アヘン戦争を経て、イギリスの支配をうけることになり、20世紀全般を通じて、香港は中国の政治家、資本家、知識人たちの避難所として機能してきた。

香港返還(1997年)後は「一国二制度」として50年間の高度な自治が約束されていたのだが、昨今は中国共産党が香港の民主政治を弾圧しようとする動きが強まっている。

香港では2020年6月、反体制活動を取り締まる「香港国家安全維持法(国安法)」が施行され、「一国二制度」が損なわれ、市民の自由が大きく制限されるとして、欧米各国は中国への対抗措置をとった。

「香港国家安全維持法」は、国の分裂や政権の転覆、外国の勢力と結託して国家の安全に危害を加える行為などを取り締まるもので、施行からこの半年間でおよそ30人が逮捕されました。

また、先月には中国が決定した新たな基準に基づいて、議会に当たる立法会の民主派議員4人の資格が取り消されるなど、政府に批判的な言論や政治活動は封じ込められています。

また、学校現場では中国への帰属意識を高めるための愛国教育が強化されるなど、中国による統制は香港社会にも及んでいます。

言論や表現の自由など香港の自治を保障した「一国二制度」の形骸化が進む中で、香港中文大学がことし10月に発表した市民700人余りを対象に行った調査では、全体の4割以上が「海外への移住を考えている」と答えるなど、香港を離れて海外への移住を希望する人が増えています。

台湾

台湾は、オランダや清に支配されたり、日本の植民地となったりした歴史があった。

そして、日本の植民地時代が終了すると、第二次世界大戦後の中国国内における国共内戦で敗れた中華民国政府が台湾に亡命し、外省人(国共内戦に敗れて亡命してきた人々)が本省人(以前から台湾に住む人々)を支配する構図が1987年まで続いた。

その後、台湾での初めての本省人(台湾出身者)として総統となった李登輝は中国共産党との内戦状態の終結を宣言し、国民の直接選挙による総統選挙を実施したことで、民主化が実現した。

現在は、民進党の蔡英文は初の女性総統として政権交代を果たしたが、中華人民共和国側は分離独立が加速することを警戒し、中台関係が悪化、台湾経済にも悪影響を及ぼすこととなった。

独立を求める台湾に対して、中国共産党は統一を求めており、対立は依然として続いている。

サイバー攻撃

中国によるサイバー攻撃は、ここ数年の話ではありませんが、最近は特に重大な問題となっています。

2021年にも、米国でマイクロソフトのメールシステムの脆弱性(セキュリティー上の欠陥)を突いたサイバー攻撃が広がっている。

マイクロソフトによると中国系ハッカーが関与したとみられ、米政府も警鐘を鳴らす。被害は米国の産業供給網(サプライチェーン)の基盤である中小企業など3万の組織に及ぶとの推計もある。

結論

アメリカにも中国にも人権問題が存在することが分かりましたが、一応「問題である」と認識しているアメリカに対して、中国は「事実無根である」などとして問題を認めないことから、中国の方が悪質であると考えられます。

更に、アメリカの人種差別は偏見や固定観念から発生する差別であるのに対して、中国のウイグルやチベットに対する人権侵害は国家が民族を滅ぼすために国民に強制している点でも、悪質であると言えます。

つまり、結論としては、米中双方が問題を抱えているが、中国の方がより深刻で悪質な人権侵害を国家が積極的に推進していると言えます。

参考サイト

世界史の窓 公民権法

黒人差別の問題|アメリカと日本での差別の歴史と私たちにできること

アジア人の私が考える「アジア系差別」が黙過されている理由

中国の人権問題を看過するな

超入門 チベット問題

自由をめぐる香港の歴史

「香港国家安全維持法」施行から半年 中国の統制強まる

世界史の窓 台湾

米3万組織に攻撃、中国系ハッカーか Microsoft標的

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